9月15、16日 国際医療福祉大学学会学術大会を開催しました。
第9回国際医療福祉大学学会学術大会が9月15、16日の2日間にわたり、「IUHW 四半世紀の歩みと今後の展望~未来医療の展望~」をテーマに東京赤坂キャンパスで開かれました。
続いて大会長である黒澤和生・小田原保健医療学部長が「1995年に日本初の医療福祉の総合大学として開学した本学は四半世紀を迎え、現在6キャンパスに医学部を含む10学部24学科に発展、来年は国際医療福祉大学成田病院が開院して6附属病院体制となるまでになり、医療福祉専門職の学術の拠点として大きな役割を担っています」と今大会の意義を述べました。
1日目の最初のプログラムとして、宮崎勝副学長(国際医療福祉大学成田病院準備委員長)が「成田新病院における未来医療の展開」と題し、特別講演を行いました。
宮崎副学長は、来春開院する成田病院について、「国内のみならず海外から多くの患者さまを迎えるべく最先端で高品質の医療が提供できるような世界基準のハブ病院をめざしています」と特長を説明。そのうえで、「目覚しい技術革新の波は医療の世界にも大きな変革をもたらしています。成田新病院は世界に先駆けて、その未来医療の展開を世界の魁となるべく準備をしています」と決意を述べました。
1.「健幸なまちづくりの構築に向けた参加学習プログラムの開発-地域特性と地域住民のニーズ-」(梅木彰子・福岡看護学部看護学科講師)
2.「赤外線センサを用いた上肢関節位置覚評価システムの開発 -健常者と健常発達児における検証-」(糸数昌史・成田保健医療学部理学療法学科准教授)
3.「アルツハイマー病の語の意味記憶について-語流暢性課題からの検討」(大内田博文・ 福岡保健医療学部言語聴覚学科助教)
4.「視覚特性が読みの過程に及ぼす影響~若年者における読み書き能力と調節機能との関連~」(岡野真弓・保健医療学部視機能療法学科准教授)
5.「局所進行膵臓癌のPET画像における腫瘍内不均一性による新たながん診断法の開発・評価」(三輪建太・保健医療学部放射線・情報科学科講師)
6.「NK細胞のADCC活性および抗体医薬品の薬理効果に影響する遺伝子多型の解析」(大星航・成田保健医療学部医学検査学科講師)
7.「モルヒネ誘発鎮痛作用の耐性形成に対するIL-31の併用効果」(辻稔・薬学部薬学科教授)
8.「Physical exercise improves self-reported life satisfaction, vitality and alertness in first-year medical students」(Florescu Mihail Cosmin 医学部総合教育センター講師)
その後、「未来研究支援センターの役割と未来医療の展望」をテーマに、国際医療福祉大学大学院副大学院長の山崎力・未来研究支援センター長を座長に藤田烈・同センター講師と平松達雄・同センター教授が講演。2018年4月に設立されたセンターの役割、活動の概要について紹介したのち、「世界で最も価値のある資源はもはや石油ではなくデータだ」と指摘。「近年は高度なディープラーニング手法が席巻してAIブームにつながり、データ駆動型社会の時代になってきている」と強調しました。さらに国際医療福祉大学として、附属病院のデータを集積して学内活用するため開始した環境整備について解説しました。
今回の招請講演は瀧口登志夫キヤノンメディカルシステムズ代表取締役社長と福井トシ子・日本看護協会会長の2人が行いました。
瀧口社長は、「医療機器における未来医療の展望」をテーマに、「栃木県大田原市に工場を設立して40年。2000年には大田原市に本社機能を移転し、大田原市に本校がある国際医療福祉大学はとても身近な存在だ」と切り出して講演をスタートしました。1960年代のX線テレビの医学応用から、画像データのデジタル化、3次元化など医療機器の技術革新と、それに沿って成長してきたキヤノンメディカルの歴史について解説しながら、「2050年はどんな時代になっているだろう」と30年後のあるべき姿について語りました。
また、「高齢化が進展するなかで、医療費の増加は国家財政に負荷を与えることを胸に刻んで技術開発をすること、医療機器のコストを最適化することにチャレンジしていく」と強調。「健康寿命の延伸サポートはひとつのテーマ」であると位置づけ、それを具現化するための「未来の医療機器が利用されていき、さらなる微細化、高度化、高速化に向けた技術が進んでいく」と述べました。
講演後の質疑応答では「グローバル社会のなかで大田原の位置づけは」との問いかけに「大田原市の本社機能を変えるつもりはない。グローバルな展開をめざすなかで、大田原はヘッドクオーターであり、1000人の技術者がいる大田原市は研究の中枢。これからも国際医療福祉大学とともに、大田原から世界に向けて発展をめざしたい」と呼びかけました。
福井会長は、超高齢化社会とともに複雑な疾患をもち、慢性化・長期化する高齢者の病態像を紹介し、暮らしの場で療養を継続する高齢者を支援するためには、看護職のさらなる実践能力強化が急務と指摘。「24時間を通じて、最も身近な医療専門職として第一線にいる看護師は状態の変化を即座に察知し、必要な看護をタイムリーに提供することが重要だ」と述べ、そのためには「すべての看護師に高い能力が求められている」と語りました。地域包括ケアシステムのなかでは、「看護は常に予防的な視点に立ち、どのような健康状態であっても、その人らしく暮らすことを支援する」との理念を通じて参画するとし、「看護の力が社会の力になる」ことを強調しました。
会場から「大学に求めること」を質問され、福井会長は「実践力の高い看護師をどう育てるかが重要。そのためには、臨床実習を充実させることが必須。実習環境の整備も推進する必要がある」と答えました。
福井会長は杏林大学医学部付属病院看護部長を経て2010年日本看護協会常任理事、2017年から日本看護協会会長に就任。2005年3月に国際医療福祉大学大学院で保健医療学博士を取得されています。
2日目の午前中はポスターセッションを開催しました。今回の大会には324件の演題が寄せられ、ポスターを前に多くの教員による発表とともにディスカッションが行われました。
(IPE:Interprofessional Education)について現状報告とともに、これからめざす教育方針などを説明しました。